# 歩行・移動介助のコツ|杖・片麻痺・見守りの手順と転倒予防
「支えているつもりが、逆にふらつかせてしまった」「どっち側に立てばいいのか、いまだに自信がない」——そんな思いから「歩行介助 コツ」と検索して、このページにたどり着いた方も多いと思います。
歩行の介助は、介護の中でも「利用者さんの体をあずかる」きんちょうする場面です。ひとつ間違えば転倒(ころんでケガをすること)につながるので、こわいと感じるのは自然なことです。
この記事では、歩行・移動介助の基本を、順番にやさしく解説します。立ち位置・杖歩行の手順・片麻痺(かたまひ)の方の支え方・見守りのコツ・転倒を防ぐ環境まで、まとめて取り上げます。
介助する側が腰を痛めない工夫もまとめました。読み終わるころには、「どう立って、どう声をかけて、どこに気をつければいいか」がはっきりするはずです。
なお、麻痺の程度や「どこまで自分で歩いてよいか」の判断は、看護師・医師・リハビリ職が決めることです。リハビリ職とは、歩く・立つなどの動作訓練の専門職のことです。この記事は、その方針にそって現場で介助するときのコツをまとめたものです。

歩行の介助、立つ位置や支え方が合ってるか不安…。転ばせたら怖い。

立ち位置や杖歩行の手順を、理由つきでやさしく説明します。転倒を防ぐコツまでお伝えしますね。
結論:歩行介助は「残った力を活かす」と「転ばせない」の両立
最初に結論からお伝えします。
歩行・移動介助のゴールは、代わりに歩いてあげることではありません。利用者さんが自分の力で歩く「じゃま」をせず、転ばないように「そっと守る」ことです。
つい手を強く貸したくなりますが、支えすぎると本人の足の力が弱っていきます。だからこそ、次の3つを軸に覚えてください。
- 立ち位置は「患側(かんそく=麻痺している側)のやや後ろ」が基本。 転びやすい側を、後ろから守れる位置です
- 急がせない・引っ張らない・声をかける。 この3つを守るだけで、転倒はぐっと減ります
- 転ばせない環境をつくる。 段差・ぬれた床・合わない履物・暗さは、介助の技術より先に直すべき原因です
「患側」「健側(けんそく)」という言葉がこのあと何度も出てきます。むずかしくないので、まず用語からやさしく整理していきましょう。
そもそも歩行・移動介助とは?目的と基本を知る
「代わりに歩く」ではなく「自立を支える」ためのもの
歩行・移動介助とは、自分ひとりで歩くのがむずかしい方が、安全に移動できるように手伝うことです。
大事なのは目的です。介助の目的は、大きく2つあります。
- 自立支援: 本人の残っている力(残存能力)を使ってもらい、歩く力を保つこと
- 転倒予防: ふらついたり、力が抜けたりしたときに、ケガを防ぐこと
この2つは、じつは向きが逆になりがちです。守ろうとして支えすぎると、本人の力を奪ってしまうからです。
たとえば、まだ自分で歩ける方の腕をずっと持ち上げていると、足に体重が乗らず、かえって歩く力が落ちていきます。「必要なときだけ、必要なぶんだけ」支えるのがプロの介助です。
覚えておきたい3つの言葉(患側・健側・片麻痺)
このあとの説明で必ず使う言葉を、先にやさしく整理します。
| 言葉 | よみ | かんたんな意味 |
|---|---|---|
| 片麻痺 | かたまひ | 体の左右どちらか半分が、動かしにくくなった状態 |
| 患側 | かんそく | 麻痺している側。動きにくく、力が入りにくい側 |
| 健側 | けんそく | 麻痺していない側。ふだんどおり動く側 |
たとえば「右片麻痺の方」なら、右が患側(動きにくい側)、左が健側(動く側)です。
どちらが患側かは、見た目だけでは分かりにくいこともあります。介助に入る前に、申し送りや記録、看護師・リハビリ職に必ず確認してください。
なぜ患側を守るのか
歩くとき、人は体重を左右の足に交互に乗せます。患側は力が入りにくいので、その足に体重が乗った一瞬に、ひざが折れたり、体が患側へかたむいたりしやすいのです。
だから、転ぶとしたら「患側に向かって」倒れることが多くなります。介助者が患側を守る位置に立つのは、この「倒れやすい方向」を受け止めるためです。
基本の立ち位置と姿勢のつくり方
片麻痺の方は「患側のやや後ろ」に立つ
歩行介助の立ち位置は、患側(麻痺している側)の、やや後ろが基本です。
真横ではなく「やや後ろ」なのには理由があります。前に立つと本人の視界と歩く道をふさぎ、真横だと後ろへ倒れたときに支えきれないからです。
やや後ろにいれば、前・横・後ろのどの方向にかたむいても、体を寄せて受け止められます。
手はどこを支える?
支える場所は、場面によって変わります。基本の一例は次のとおりです。
- 患側の手や腕を、下からそっと支える(引き上げず、そえる程度)
- もう一方の手は、腰(骨盤のあたり)に軽くそえるか、いつでも支えられるように構える
- 転倒予防用のベルト(介助ベルト)があれば、それを持つと安全です
ポイントは「にぎって引っぱらない」ことです。強く引くと、本人はバランスをくずし、かえって転びやすくなります。
介助者の姿勢(自分の体も守る)
利用者さんを守るには、まず自分が安定していることが大切です。
- 足を前後に軽く開き、ひざを少しゆるめて立つ
- 背中を丸めず、おへそを相手に向ける
- 相手にぴったり近づく(離れているほど、支えるとき腰に負担がかかります)
介助者の腰痛は、この「離れた姿勢」と「引っぱる動き」から起きがちです。腰を守るくわしい工夫は、後半の章と腰痛対策の記事でまとめています。
杖歩行の介助手順(三動作歩行の一例)
杖を使って歩く方の介助を、順番に見ていきます。ここでは基本の一例として「三動作歩行(さんどうさほこう)」を紹介します。
三動作歩行とは、杖 → 患側の足 → 健側の足の3つの動きに分けて、ゆっくり進む歩き方です。動きを分けるぶん安定しやすく、練習中の方に向いています。
杖は原則「健側(動く側)の手」で持ちます。患側を杖と健側の足で支える形になり、バランスが取りやすくなるからです。
ステップ1:歩き出す前の準備
1. 足元に段差・コード・水ぬれがないか確認する
2. 履物がかかとまで入っているか、すべりやすくないか見る
3. 「これから廊下の先まで歩きましょうか」と行き先を伝える
4. 患側のやや後ろに立ち、支える位置を決める
いきなり歩き出さず、必ず声をかけてから始めます。心の準備ができていないと、体がこわばって転びやすくなります。
ステップ2:杖を前に出す
まず、杖を無理のない一歩ぶん前に出してもらいます。
遠くに出しすぎると、体が前のめりになって危険です。「つま先から20〜30センチくらい先」を目安に、ゆっくりで大丈夫です。
ステップ3:患側の足を出す
次に、患側(動きにくい側)の足を、杖の近くまで出してもらいます。
このとき介助者は、体をそっと寄せて構えます。患側に体重が乗る一瞬が、いちばんふらつきやすい場面だからです。
ステップ4:健側の足をそろえる
最後に、健側(動く側)の足を前に運び、両足をそろえます。
これで1歩ぶんです。あわてて次の一歩へ進まず、「1・2・3」のリズムで一歩ずつ確実に進みます。
慣れてきたら「二動作歩行」
歩きに慣れて安定してきた方は、杖と患側の足を同時に出し、次に健側の足を運ぶ「二動作歩行」に進むこともあります。
ただし、どの歩き方が合っているかは、本人の体の状態しだいです。歩き方を変えるときは、必ずリハビリ職に相談してから行ってください。
片麻痺・見守り歩行で大切な「引っぱらない・急がせない」
手を引っぱるのは逆効果
いちばんやりがちな失敗が、前から手を引く「手引き歩行」を強くやりすぎることです。
前から引っぱると、本人の体は前のめりになり、足がついてこられずに前へ転びやすくなります。介助者も、後ろ向きに歩くので周りが見えず危険です。
支えるときは「引く」のではなく「そえる・受け止める」。この感覚を大事にしてください。
急がせない(相手のペースに合わせる)
「早くしてください」という言葉や、せかす雰囲気は、いちばんの転倒リスクです。
急がされると、人は足元より「急ぐこと」に気を取られ、すり足になって段差につまずきます。
たとえば、こちらが半歩ぶん先に足を出してしまうと、相手はつられて速く歩こうとします。ペースは必ず「相手に合わせる」のが鉄則です。
声かけは「これから」を伝える
無言の介助は、相手を不安にさせます。次のように、動く前に一言そえましょう。
- 「じゃあ、右足からいきましょう」
- 「ここで少し止まりますね」
- 「もうすぐ曲がり角です、ゆっくりで大丈夫ですよ」
「これから何が起きるか」が分かると、体の準備ができて、ふらつきが減ります。
見守り歩行のときも「手を出せる距離」に
ある程度自分で歩ける方は、体を支えず、そばで見守る「見守り歩行」になります。
このとき離れすぎるのは禁物です。ふらついた瞬間にすぐ手を出せる、患側のやや後ろの距離をキープしてください。
「見守り」は「放置」ではありません。手は出さなくても、目と心は常に相手の足元に向けておきます。
転倒を防ぐ環境づくり(技術より先に直す)
じつは転倒の多くは、介助の腕前より「環境」で決まります。どんなに上手に支えても、ぬれた床では転びます。
歩く道を、次の視点でチェックしてください。
| チェック項目 | 見るポイント | 対策の一例 |
|---|---|---|
| 段差 | わずかな段差・敷居・じゅうたんのふち | スロープ・段差解消・目印テープ |
| 床 | 水・尿・こぼれ物でぬれていないか | すぐふき取る・すべり止めマット |
| 履物 | かかとがある・サイズが合う・すべらない | かかとつきの靴・スリッパは避ける |
| 明るさ | 廊下や夜間トイレまでが暗くないか | 足元灯(フットライト)をつける |
| じゃま物 | コード・荷物・ぬれタオル | 通り道に物を置かない |
とくに「履物」と「夜間トイレ」に注意
スリッパは、かかとがなくすべりやすいため、転倒の原因になりやすい履物です。かかとまで包む、サイズの合った靴が安心です。
また、夜中にトイレへ向かうときは、暗さ・ねぼけ・急ぐ気持ちが重なって転びやすくなります。トイレへの排泄介助や夜間の移動では、足元灯と早めの声かけがとくに大切です。
福祉用具をじょうずに使う(歩行器・手すり・杖)
福祉用具(ふくしようぐ=介護を助ける道具)を使うと、本人の「自分で歩ける範囲」が広がります。
代表的なものを整理します。
- 杖: 片方の手で使う。1本足のものや、先が4つに分かれて安定する多点杖などがある
- 歩行器・歩行車: 両手で支える、手押し車のような道具。安定感が高い
- 手すり: 廊下・トイレ・玄関など、決まった場所での移動を支える
どの道具が合うかは、体の状態や住まいによって変わります。合わない道具はかえって危ないので、リハビリ職や、福祉用具の相談員に選んでもらうのが安心です。
福祉用具を専門にえらぶ仕事については、福祉用具専門相談員の記事でくわしく紹介しています。
高さの合っていない杖・歩行器は危険
杖や歩行器は、高さが合っていないと逆に転びやすくなります。
たとえば杖が高すぎると、わきが上がって力が入りません。低すぎると前かがみになります。
高さの調整も、勝手に変えず、リハビリ職の指示にそって行ってください。
介助する側が腰を痛めないために
利用者さんを守るためにも、介助者自身の体を守ることは同じくらい大切です。腰を痛めて休むと、現場全体がまわらなくなります。
歩行介助で腰を守るコツは、次のとおりです。
- 相手に近づく: 離れて支えるほど、腰にかかる力は大きくなります
- 引き上げず、そえる: 持ち上げる動きは腰に直撃します
- 自分の足腰を使う: 腕の力ではなく、ひざを軽く曲げて全身で支える
- 無理なら一人で抱えない: ふらつきが大きい方は、二人介助や用具の使用を検討する
歩き出す前のベッドや車いすからの立ち上がり(移り)でも、腰を痛めやすいものです。この「移る」動作のコツは移乗介助の記事に、腰痛そのものの予防は腰痛対策の記事にまとめています。
現場のリアル:あせりが転倒を呼ぶ
歩行介助での「ヒヤリ」は、技術不足よりも「あせり」から起きることが少なくありません。
モデルケース: 新人のBさんは、トイレに行きたいと訴える利用者さんを、急いで支えようとしました。
このとき、患側の確認を飛ばし、健側の後ろに立って手を強く引いてしまいました。利用者さんは患側へかたむき、ヒヤリとする場面に。幸い、そばにいた先輩がとっさに支えてことなきを得ました。
あとで先輩に言われたのは、「10秒の確認を省くと、10分のケガ対応になる」という言葉でした。
Bさんはそれ以来、どんなに急いでいても「患側はどっち」「行き先はどこ」「足元は大丈夫」の3つだけは、声に出して確認するようにしました。
転倒は、介護現場で起こりやすい事故のひとつです。だからこそ、あせらない・省かない・引っぱらない、という基本の積み重ねが、いちばんの予防になります。
よくある質問
まとめ:あせらず、そえて、環境から守る
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 歩行介助の目的は「残った力を活かす」と「転ばせない」の両立。代わりに歩くことではない
- 立ち位置は患側(麻痺している側)のやや後ろが基本
- 杖歩行の一例は杖 → 患側の足 → 健側の足の三動作歩行。引っぱらず、そえて支える
- 急がせない・引っぱらない・声をかけるの3つで転倒はぐっと減る
- 段差・ぬれた床・合わない履物・暗さは、技術より先に直すべき転倒の原因
歩行の介助は、最初はだれでもこわいものです。でも「あせらず、相手のペースに合わせ、環境から守る」という基本は、一歩ずつ体になじんでいきます。
そして、歩き方や動かしてよい範囲の判断は、看護師・医師・リハビリ職の役割です。迷ったら一人でかかえこまず、必ず相談してください。あなたの「確認する10秒」が、利用者さんの安全を守ります。
- 歩行介助のとき、片麻痺の方のどちら側に立てばいいですか?
-
基本は「患側(麻痺している側)のやや後ろ」です。患側は力が入りにくく、その方向へ倒れやすいためです。真横や前ではなく、やや後ろに立つと、前・横・後ろのどこにかたむいても受け止めやすくなります。どちらが患側かは、申し送りや看護師・リハビリ職に必ず確認してください。
- 杖は「杖→どちらの足」から出すのが正しいですか?
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基本の一例である三動作歩行では、「杖 → 患側(動きにくい側)の足 → 健側(動く側)の足」の順で進みます。杖は原則、健側の手で持ちます。ただし、どの歩き方が合うかは体の状態で変わります。歩き方を変えるときは、必ずリハビリ職に相談してください。
- 歩いている途中でふらついたら、どう支えればいいですか?
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引っぱって立て直そうとせず、相手の体に自分の体を寄せて、まず「その場で止める」ことを優先します。腰や介助ベルトを支え、いったん足を止めて落ち着いてもらいます。倒れそうなときは、無理に立たせず、ゆっくり床へ座らせる方が安全なこともあります。頭を打った・強く倒れたなどのときは、動かす前に看護師・医師へ報告してください。
- 前から両手を引く「手引き歩行」はしてもいいですか?
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安定して歩ける方への短い距離など、場面によっては使いますが、強く引くのは禁物です。前から引くと本人が前のめりになり、足がついてこられず前へ転びやすくなります。介助者も後ろ向きで周りが見えません。基本は「引く」より「患側のやや後ろでそえる・受け止める」介助が安全です。
- 歩行器と杖、どちらを使えばいいですか?
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体の状態や住まいによって変わるため、一概には言えません。一般には、両手で支える歩行器のほうが安定感は高く、杖は手軽に使えます。ただし合わない道具はかえって危険です。どの道具が合うか、高さの調整も含めて、リハビリ職や福祉用具の相談員に選んでもらうのが安心です。
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