# 清拭(せいしき)の手順とコツ|体を清潔に保つケア
「入浴できない利用者さんの体を、どうやってきれいにしてあげればいいんだろう」「なんとなく拭いているけれど、この順番で合っているのかな」——そんな思いから、このページにたどり着いた方も多いと思います。
清拭(せいしき)は、介護の現場でとてもよく行うケアです。でも、いざ一人でやろうとすると、湯温・順番・体を冷やさない工夫など、迷うことがたくさん出てきます。
この記事では、清拭の手順とコツを、はじめての方でもわかるようにやさしく解説します。準備・拭く順番・保温・プライバシーへの配慮・皮膚の観察まで、ひとつずつ見ていきます。読み終わるころには、「どんな流れで進めればいいか」が具体的にイメージできるはずです。
なお、この記事の手順はあくまで一般的な一例です。皮膚の状態や体調は一人ひとり違います。実際のケアは、勤め先の手順書と、看護師・先輩からの指示を必ず優先してください。

清拭のやり方、これで合ってるか不安…。順番や温度はどうすれば?

手順とコツを一つずつ整理します。プライバシーや皮膚の観察まで、やさしくお伝えしますね。
結論:清拭は「清潔・保温・観察」を同時に行うケア
最初に、いちばん大事なところをお伝えします。
清拭とは、お風呂に入れないときに、蒸しタオルなどで体を拭いて清潔にするケアのことです。 発熱・体調不良・医療上の理由などで入浴が難しい方に対して行います。
拭くだけの単純な作業に見えますが、実は次の3つを同時に行う、とても大切なケアです。
- 体をきれいにする(汚れ・汗・皮脂を取り除いて清潔を保つ)
- 体を冷やさない(拭いたらすぐ乾いたタオルで水分を取り、覆う)
- 皮膚をよく観察する(赤み・傷などがないか目で確かめる)
そして、清拭を進めるうえで、頭に置いておいてほしいポイントが3つあります。
- 体を冷やさないことを最優先にする。 服を全部脱がせて一気に拭くのはNGです
- プライバシーを必ず守る。 見えなくてよい部分は、そのつどタオルで覆います
- 皮膚に赤み・傷・いつもと違う様子があったら、自分で判断せず看護師・医師へ報告する
この3つを守れば、清拭は「体をきれいにする時間」であると同時に、利用者さんが「さっぱりして気持ちいい」と感じられる、心地よいケアになります。それでは、順番にくわしく見ていきましょう。
清拭とは?目的と種類をやさしく整理
まずは「そもそも清拭は何のためにやるのか」を整理します。目的がわかると、一つひとつの動きに意味が出て、ケアがぐっとていねいになります。
清拭の4つの目的
清拭には、大きく分けて4つの目的があります。
| 目的 | 中身 |
|---|---|
| 清潔を保つ | 汗・皮脂・汚れを取り、においやかゆみ、皮膚のトラブルを防ぐ |
| 血のめぐりをよくする | やさしくさすることで血行がよくなり、気分もほぐれる |
| 皮膚を観察する | 体を拭きながら、赤みや傷がないかを目で確かめられる |
| さっぱりした気分になる | 体が清潔になると気持ちも前向きになり、生活のリズムが整う |
たとえば、何日もお風呂に入れないと、背中やお尻がむれてかゆくなったり、においが気になったりします。清拭は、それを防いで「気持ちよく過ごせる体」を保つケアなのです。
全身清拭と部分清拭のちがい
清拭には、全身を拭く方法と、一部だけを拭く方法があります。
- 全身清拭: 顔から足先まで、体全体を拭く方法。時間と体力を使うので、体調のよいときに行います
- 部分清拭: 背中・お尻・陰部・足など、一部だけを拭く方法。体力の落ちている方や、汚れた所だけを整えたいときに向いています
たとえば、体調がすぐれない日は、汗をかきやすい背中と、汚れやすい陰部・お尻だけを部分清拭する、という進め方もよくあります。無理に全身をやろうとせず、その日の体調に合わせて選ぶことが大切です。
蒸しタオルと石けん、どちらを使う?
拭き方には、蒸しタオル(お湯でしぼった温かいタオル)だけで拭く方法と、石けんを使って洗う方法があります。
汗や軽い汚れなら、蒸しタオルだけでも十分さっぱりします。皮脂の多い所や、においが気になる所は、石けんを使うとよりきれいになります。
ただし、石けんを使ったら、必ずぬるま湯でしぼったタオルで石けん分をしっかり拭き取ります。石けんが肌に残ると、かゆみや皮膚の荒れの原因になるからです。どちらの方法を使うかは、施設の手順や皮膚の状態に合わせて選んでください。
清拭の準備:湯温・室温・プライバシー・物品
清拭は、準備で8割が決まると言ってもいいくらい、事前の用意が大切です。途中で「タオルが足りない」と席を立つと、その間に体が冷えてしまうからです。
そろえておく物品リスト
始める前に、次のものを手の届く場所にまとめて置きます。
| 物品 | 使いみち |
|---|---|
| フェイスタオル数枚 | 体を拭くタオル。多めに用意する |
| バスタオル1〜2枚 | 体を覆って保温する・下に敷く |
| お湯を入れる容器(ベースン等) | タオルをしぼるためのお湯を入れる |
| 差し湯用のお湯(ポット等) | 途中でお湯がぬるくなったら足す |
| 石けん・清拭剤 | 汚れの強い所を洗うとき(必要に応じて) |
| 使い捨て手袋・エプロン | 陰部などを拭くとき・感染を防ぐため |
| 着替え・おむつ等 | 拭き終わったあとに使うもの |
| ビニール袋・ゴミ袋 | 使ったタオルや汚れ物を入れる |
たとえば、タオルは「足りるかな」と思うより1〜2枚多めに用意しておくと安心です。途中で足りなくなって取りに行くと、その間、利用者さんを冷えた状態で待たせてしまいます。
室温とお湯の温度
室温は、少し暖かいと感じるくらいに整えます。 体を出すので、いつもの部屋より暖かめが安心です。窓やドアを閉めて、風が直接当たらないようにします。
お湯の温度は、少し熱めに準備するのがコツです。タオルをしぼって肌に当てるころには、温度が下がるからです。目安として、肌に当たるときに「気持ちいい」と感じるくらいの温かさを意識します。
ただし、熱いか冷たいかの感じ方は、一人ひとり違います。必ず自分の腕の内側でタオルの温度を確かめてから肌に当ててください。そして「熱くないですか」と本人にも一声かけます。糖尿病などで感覚が鈍くなっている方もいるので、やけどには特に注意が必要です。温度の管理に不安があるときは、看護師や先輩に相談してください。
プライバシーと声かけ
清拭は、体を人に見せる、とてもデリケートなケアです。だからこそ、はずかしい思いをさせない配慮がいちばん大切です。
- カーテンやドアを閉め、外から見えないようにする
- 拭いている所以外は、必ずバスタオルで覆っておく
- 「これから体を拭かせてもらいますね」と、始める前に必ず声をかける
- 陰部など、特にデリケートな所は「失礼しますね」と一言添える
たとえば、上半身を拭くときは下半身をタオルで覆い、下半身を拭くときは上半身を覆う、というように、出すのは拭く所だけにします。これだけで、利用者さんの安心感がまったく変わります。
清拭の手順:拭く順番とコツ
ここからは、実際の手順を順番に見ていきます。ここで紹介するのは、顔から始めて陰部で終える、一般的な流れの一例です。施設によって順番が違うこともあるので、勤め先の手順を優先してください。
タオルの準備と、拭き方の基本のコツ
まず、拭くときのコツを2つ覚えておくと、ぐっと上手になります。
1つめは、タオルを手に巻きつけて、はしを内側に入れ込むことです。 タオルのはしがひらひらすると、冷たく感じたり、肌に引っかかったりします。ミトン(手ぶくろ)のように手に巻くと、面がなめらかで拭きやすくなります。
2つめは、腕や足は「体の先から体の中心に向かって」拭くことです。 たとえば腕なら、手先から肩に向かってやさしくさすります。これは血のめぐりを助けるためと言われています。
そして、どの部分でも共通する、いちばん大事なコツがあります。拭いたらすぐ、乾いたタオルで水分を押さえて、体を覆うことです。 ぬれたまま置くと、水分が蒸発するときに体温をうばい、体が冷えてしまうからです。
順番の一例:顔 → 腕 → 胸腹部 → 背中 → 足 → 陰部
1. 顔を拭く。 目のまわりは、目頭(鼻側)から目じり(外側)へ、片目ずつ別の面で拭きます。そのあと、鼻・頬・口のまわり・額・耳・首の順にやさしく拭きます
2. 腕・手を拭く。 手先から肩に向かって拭きます。わきの下は汗がたまりやすいのでていねいに。手は指の間まで拭き、洗面器のお湯につけて洗うと喜ばれます
3. 胸・おなかを拭く。 胸の下や、おなかのしわの間は汚れがたまりやすい所です。おなかは「の」の字を書くように、やさしく拭きます
4. 背中・お尻を拭く。 横向きになってもらい、首すじからお尻に向かって拭きます。背中は血のめぐりがよくなり気持ちよい所なので、少していねいにさすります
5. 足を拭く。 足先から太ももに向かって拭きます。指の間、かかとも忘れずに。足をお湯につけて洗う「足浴」を合わせると、とてもさっぱりします
6. 陰部を拭く。 いちばん最後に、別のきれいなタオルと手袋を使って拭きます。陰部は、清潔を保つためにも大切な部分です。羞恥心に配慮し、できる範囲でご自身に拭いてもらうのもよい方法です
陰部を拭くときは、感染を防ぐため、前から後ろへの一方向で拭くのが基本です。汚れの強い所を拭いたタオルの面は、他の場所に使い回さないよう気をつけます。陰部のケアの考え方は、排泄介助の記事もあわせて参考にしてください。
拭き終わったあとにやること
全身を拭き終えたら、体をよく乾かし、すぐに着替えを行います。着替えのコツは、更衣介助の記事でくわしく解説しています。
顔を拭くタイミングで、口の中のケアを合わせて行うと、よりさっぱりします。口の中のケアについては口腔ケアの記事も参考にしてください。
最後に、「さっぱりしましたね」「おつかれさまでした」と声をかけ、体調に変わりがないかを確認します。使ったタオルや汚れ物は片づけ、記録に残して終了です。
清拭中の皮膚の観察と、拒否されたときの工夫
ここは、清拭がただの「作業」で終わるか、「利用者さんを守るケア」になるかの分かれ道です。現場で大切にしたい2つのポイントを紹介します。
皮膚を観察し、異常は必ず看護師へ
清拭は、体全体を近くで見られる、貴重な観察のチャンスです。拭きながら、次のような所を目で確かめます。
- 赤くなっている所はないか(特に、お尻・かかと・背中など、寝ているとき体重がかかる所)
- 傷・かさぶた・皮膚がむけている所はないか
- 皮膚が乾いてカサカサしていないか、じくじくしていないか
- ぶつけたようなあざや、いつもと違う様子はないか
ここで、いちばん大事な線引きをお伝えします。赤み・傷・水ぶくれ・皮膚のただれなど、気になる所を見つけたら、自分で「大丈夫」「たいしたことない」と判断してはいけません。 その場で薬を塗ったりするのもやめてください。
やることはひとつです。気づいたことを、そのまま看護師・医師へ報告することです。 「お尻に赤みがあります」「かかとに傷のようなものがあります」と、見たままを伝えます。
特に、体重がかかる所の赤みは、床ずれ(褥瘡〈じょくそう〉。皮膚が圧迫されて傷んでしまう状態)の始まりのことがあります。早めに気づいて報告することが、悪化を防ぐ第一歩です。床ずれの予防については褥瘡予防の記事でくわしく解説しています。
医療的な判断は、看護師・医師の役割です。介護職の役割は、「早く気づいて、正しく伝えること」。この線引きを守ることが、利用者さんを守ることにつながります。
清拭を拒否されたときの工夫
「拭かないで」「今はやりたくない」と、清拭を嫌がられることもあります。そんなときに、無理やり進めるのは絶対に避けてください。
拒否には、たいてい理由があります。「寒いのがいや」「はずかしい」「体を動かすのがつらい」「今は気分じゃない」——まずは、その気持ちを受け止めることから始めます。
たとえば、次のような工夫が助けになります。
- 時間をおいて、もう一度声をかける。 食後や、機嫌のよいタイミングを選ぶ
- 全部ではなく、一部から始める。 「顔だけ拭きましょうか」「手だけ、あたたかいタオルでどうですか」と、ハードルを下げる
- 寒さへの不安をなくす。 「お部屋あたためましたよ」「すぐ終わりますからね」と安心してもらう
- 本人にやってもらう。 タオルを渡して「拭ける所は自分で」とお願いすると、応じてくれることがある
- 好きな話をしながら進める。 気持ちがほぐれると、自然に受け入れてくれることも多い
それでも強く拒まれるときは、いったん引くことも大切な選択です。無理じいは、信頼関係をこわしてしまいます。うまくいかなかったことも含めて、「どんな声かけで、どう反応したか」を記録に残し、先輩や看護師と共有しましょう。次のケアのヒントになります。
体調不良が原因で拒否している場合もあります。いつもと様子が違う、元気がないと感じたら、清拭を続けるより先に、体調を看護師へ報告してください。
よくある質問
まとめ:清拭は「清潔・保温・観察」をていねいに
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 清拭は、入浴できないときに体を拭いて清潔にするケア。清潔・保温・観察を同時に行う
- 体を冷やさないことが最優先。拭く所だけ出し、拭いたらすぐ乾かして覆う
- 拭く順番は、顔 → 腕 → 胸腹部 → 背中 → 足 → 陰部は最後が一例。腕や足は先から中心へ
- お湯の温度は必ず自分の腕で確かめ、本人にも確認する
- 皮膚の赤み・傷は自分で判断せず、看護師・医師へ報告する
- 拒否されたら無理じいせず、一部から始める・時間をおくなどの工夫を
清拭は、ただ体をきれいにするだけのケアではありません。「さっぱりして気持ちいい」という時間をつくり、利用者さんの体の変化にいち早く気づける、大切な関わりの時間です。
はじめは順番や温度に迷って当然です。この記事を手元に、一つずつていねいに進めれば大丈夫。困ったときは一人で抱え込まず、先輩や看護師にどんどん相談してください。
なお、入浴介助について知りたい方は入浴介助がきついと感じるときの記事も参考になります。清拭と合わせて読むと、清潔ケア全体の見通しがぐっと立てやすくなります。
- 清拭のお湯の温度は何度くらいがいいですか?
-
肌に当たるときに「気持ちいい」と感じるくらいの温かさが目安です。お湯はしぼるうちに冷めるので、準備するときは少し熱めにします。ただし感じ方は一人ひとり違うので、必ず自分の腕の内側で確かめ、本人にも「熱くないですか」と聞いてください。感覚が鈍い方はやけどに注意が必要です。温度管理に不安があれば看護師に相談しましょう。
- 清拭はどんな順番で拭けばいいですか?
-
一般的な一例は、顔 → 腕・手 → 胸・おなか → 背中・お尻 → 足 → 陰部の順です。腕や足は、体の先から中心に向かって拭きます。陰部はいちばん最後に、別のきれいなタオルと手袋で拭きます。ただし施設によって順番が違うことがあるので、勤め先の手順を優先してください。
- 体を冷やさないためには、どうすればいいですか?
-
いちばんのコツは、「拭く所だけを出して、拭いたらすぐ乾いたタオルで水分を取り、覆う」ことです。全身を一度に出さないでください。室温は少し暖かめに整え、風が直接当たらないようにします。お湯がぬるくなったら差し湯で温度を保つことも、冷えを防ぐポイントです。
- 拭いていて皮膚に赤みや傷を見つけたら、どうすればいいですか?
-
自分で判断せず、その場で薬を塗ったりもせず、看護師・医師へ「見たまま」を報告してください。たとえば「お尻に赤みがあります」と伝えます。体重がかかる所の赤みは、床ずれの始まりのことがあります。医療的な判断は看護師・医師の役割です。介護職は「早く気づいて正しく伝える」ことに徹しましょう。
- 利用者さんに清拭を嫌がられたら、無理にでも拭くべきですか?
-
無理やり進めるのは避けてください。まず「寒い」「はずかしい」などの気持ちを受け止めます。そのうえで、時間をおく・顔や手など一部から始める・本人に拭いてもらうといった工夫を試します。それでも強く拒まれるときは、いったん引く判断も大切です。様子がいつもと違うときは、体調を看護師へ報告してください。
コメント