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喀痰吸引等研修とは?資格の取り方・費用・できることを解説

# 喀痰吸引等研修とは?資格の取り方・費用・できることを解説

「利用者さんのたんの吸引を、看護師さんが来るまで待つしかなくて心苦しい」「経管栄養を頼まれたけれど、介護職の自分がやっていいのか自信がない」——そんなモヤモヤから「喀痰吸引 研修」と検索して、このページにたどり着いた方も多いと思います。

たんの吸引や経管栄養は、もともと医療職の仕事でした。でも今は、決められた研修を受けた介護職なら、一定の条件のもとで行えるようになっています。その入口になるのが「喀痰吸引等研修(かくたんきゅういんとうけんしゅう)」です。

この記事では、喀痰吸引等研修とは何か、この研修でできるようになること、第1号・第2号・第3号という号数の違い、取り方・費用・実地研修の流れを、はじめての方にもわかるようにやさしく解説します。読み終わるころには、「自分はどの号数の研修を受ければいいのか」がはっきりするはずです。

なお、この記事は制度のしくみを説明するものです。具体的な手技のやり方や、個別の医療的な判断についてはお伝えできません。そこは必ず研修と、勤務先の看護師・医師の指示にしたがってください。

悩む介護士

喀痰吸引の研修って何?受けると何ができるようになるの?

ケアワーカーハブ編集部

できることや号数の違い、取り方まで解説します。活躍の場が広がる大切な研修です。

目次

結論:喀痰吸引等研修は「介護職がたんの吸引などを行うための資格」

最初に結論からお伝えします。

喀痰吸引等研修とは、介護職が「たんの吸引」と「経管栄養」を行えるようになるための、都道府県が認めた研修のことです。 この2つはもともと医療行為(医師や看護師が行う行為)ですが、法律の改正で、研修を修了した介護職も条件つきで行えるようになりました。

まず、次の3点だけ先に押さえてください。

  • 研修は「号数」で分かれている。 第1号・第2号・第3号があり、対象になる利用者さんとできる行為の範囲がちがいます
  • 研修は「講義+演習」と「実地研修」の2段構え。 座学だけでは終わらず、実際の現場での練習まで必要です
  • 修了しただけでは行えない。 都道府県への登録と、勤務先が国に登録した事業所であること、この両方がそろって初めて実際に行えます

この3つがわかれば、あとの内容はすっと入ってきます。それでは、順番にくわしく見ていきましょう。

喀痰吸引等研修でできるようになること

そもそも「喀痰吸引」と「経管栄養」とは

まず言葉の意味からです。

喀痰吸引(かくたんきゅういん)とは、自分でたん(のどにたまった分泌物)をうまく出せない人のために、機械を使ってたんを吸い出すケアです。たとえば、のどの力が弱った高齢の方や、体が動かしにくい難病の方に必要になります。

経管栄養(けいかんえいよう)とは、口から食事をとるのがむずかしい人のために、チューブを通して胃や腸に直接栄養を送る方法です。たとえば、飲み込む力が落ちて誤嚥(食べ物が気管に入ること)の危険が高い方に行われます。

どちらも、ひと昔前は「介護職がやってはいけない医療行為」でした。それが2012年の法律改正で、研修を受けた介護職なら行えるようになったのです。

この研修で行えるようになる「5つの行為」

喀痰吸引等研修で対象になるのは、次の5つの行為です。まとめて「特定行為」と呼ばれます。

種類行為かんたんな説明
喀痰吸引①口腔内の吸引口の中にたまったたんを吸い出す
喀痰吸引②鼻腔内の吸引鼻の奥にたまったたんを吸い出す
喀痰吸引③気管カニューレ内部の吸引のどに入れた管の内側のたんを吸い出す
経管栄養④胃ろう・腸ろうによる注入おなかに作った口からチューブで栄養を送る
経管栄養⑤経鼻経管栄養鼻から胃に通したチューブで栄養を送る

この5つのうち、どこまで行えるようになるかは、次の章でお話しする「号数」によって変わります。

できること・できないことの線引き

大事なのは、「研修を受ければ何でもできる」わけではない、という点です。

介護職が行えるのは、あくまでこの5つの決められた行為だけです。そして、実際に行うときには、必ず医師の指示書と、看護師との連携(体調の確認や記録の共有など)が前提になります。

たとえば、たんの吸引をする深さや回数、経管栄養を注入する速さといった具体的な指示は、医師・看護師が決めます。介護職はその指示にしたがって、決められた手順で安全に行う役割です。ここを勝手に判断してはいけません。

号数の違い(第1号・第2号・第3号)をやさしく整理

喀痰吸引等研修は、大きく「第1号研修」「第2号研修」「第3号研修」の3つに分かれます。ここがいちばんわかりにくいところなので、ていねいに整理します。

分かれ目は「対象者」と「できる行為の数」

号数を分ける軸は、次の2つです。

  • 対象者: 「不特定の人」向けか、「特定のこの人」向けか
  • 行為の範囲: 5行為すべてか、一部か

「不特定の人」とは、施設のいろんな利用者さんを対象にする、という意味です。「特定の人」とは、たとえば在宅で暮らす特定の難病の方など、決まった一人(または数人)を対象にする、という意味です。

3つの号数の比較表

号数対象できる行為主な現場のイメージ
第1号研修不特定多数の利用者5行為すべて特養・老健など、たん吸引が必要な人が複数いる施設
第2号研修不特定多数の利用者5行為のうち選んだ一部必要な行為だけに絞りたい施設
第3号研修特定の利用者その人に必要な行為だけ在宅・障害福祉など、決まった方を支える現場

(※特養=長く住む介護施設、老健=家に帰る前にリハビリをする施設)

どの号数を選べばいい?

ざっくりした選び方の目安は、こうです。

  • 施設で幅広く対応したい人は、5行為すべてに対応できる第1号研修
  • 勤務先で必要な行為が決まっている人は、その分だけ学べる第2号研修
  • 在宅の特定の利用者さんや、障害のある方を支える人は、その方に必要な行為に絞った第3号研修

たとえば、重い障害のあるお子さんの在宅生活を支えるヘルパーさんなら、その子に必要な行為だけを学ぶ第3号研修が向いています。一方、たん吸引が必要な入居者が何人もいる特養で働くなら、幅広く対応できる第1号研修が安心です。

自分がどの立場で働くのか(またはこれから働きたいのか)から逆算して選ぶと、迷いにくくなります。勤務先がすでに決まっているなら、「うちは何号を取ってほしいですか」と施設に聞くのがいちばん確実です。

取り方・費用・実地研修の流れ

ここからは、実際に研修を受けて資格を手にするまでの流れを、ステップで説明します。

ステップ1:研修を実施している機関を探す

喀痰吸引等研修は、都道府県が指定した研修機関(民間のスクールや、事業者団体、施設など)で受けます。「(お住まいの都道府県名) 喀痰吸引等研修」で検索すると、指定機関の一覧が見つかります。(出典:各都道府県の喀痰吸引等研修 実施機関一覧)

働きながら通えるように、講義部分を通信やオンラインで受けられる機関もあります。まずは複数の機関に資料を取り寄せて、日程・費用・場所を見くらべるのがおすすめです。

ステップ2:基本研修(講義+演習)を受ける

最初に受けるのが「基本研修」です。中身は2つに分かれます。

1. 講義: たんの吸引や経管栄養のしくみ、体のこと、感染や事故を防ぐ知識などを座学で学びます

2. 演習: 人形(シミュレーター)を使って、実際の手順を決められた回数くり返し練習します

講義の時間数や演習の回数は制度で決められています。第1号・第2号の基本研修は、講義がおよそ50時間とされています。(出典:厚生労働省「喀痰吸引等制度について」)

第3号研修は、対象がその特定の方だけなので、基本研修の時間は第1・2号より短く設定されています。

ステップ3:実地研修(いちばん大事な現場練習)

基本研修に合格すると、次は「実地研修」です。これは、実際の現場で、看護師などの指導を受けながら、決められた回数だけ手技を行うものです。

たとえば、口腔内の吸引を何回、胃ろうの経管栄養を何回、というように、行為ごとに必要な回数が決まっています。指導者が「安全に確実にできる」と確認して、はじめて修了になります。

ここが座学と大きくちがうところです。実地研修は、指導してくれる看護師や、協力してくれる利用者さんがいる現場でしか受けられません。そのため、勤務先の協力があるとスムーズです。就職・転職のときに「実地研修まで支援してくれるか」を確認しておくと安心です。

ステップ4:修了証明書をもらい、都道府県に登録する

実地研修まで終えると、研修機関から修了証明書が交付されます。

ただし、ここで終わりではありません。この証明書をもとに、都道府県へ登録の申請をして、「認定特定行為業務従事者認定証」という証明書を受け取る必要があります。この認定証があって、はじめて「行える人」として認められます。

ステップ5:勤務先が「登録事業者」であること

最後にもう1つ、見落としがちな条件があります。あなた個人が認定を受けても、働く事業所が国(都道府県)に「登録特定行為事業者」として登録していることが必要です。

たとえるなら、運転免許(あなたの認定)と、車検を通した車(事業所の登録)の両方がそろって、はじめて公道を走れるイメージです。どちらか一方だけでは実際には行えません。転職先を選ぶときは、この登録があるかも確認しておきましょう。

費用の目安

費用は研修機関や号数によって幅があります。おおまかな目安としては、第3号研修は比較的おさえめ、第1号・第2号研修は基本研修と実地研修を合わせるとやや高めになる傾向です。数万円台から十数万円台まで、機関によって差があります。

大切なのは、勤務先が費用を負担・補助してくれるケースが多いという点です。施設側も「たん吸引ができる職員」を増やしたいので、研修費を出したり、勤務扱いで受けさせてくれたりすることがあります。自己負担で申し込む前に、まず職場に相談してみてください。

データで見る:実務者研修・介護福祉士との関係

「実務者研修を受けたら、もう喀痰吸引はできるのでは?」と思う方も多いので、ここを整理しておきます。

介護福祉士の受験に必要な実務者研修(初任者研修の次のステップの資格)には、「医療的ケア」という科目があり、喀痰吸引・経管栄養の基礎(講義と演習の一部)を学びます。(出典:厚生労働省「実務者研修(医療的ケア)」)

ただし、実務者研修には実地研修が含まれていません。そのため、実際に現場で行うには、別途、勤務先などで実地研修を受けて修了する必要があります。「基礎は学んだけれど、現場でやるにはもうひと段階」というイメージです。

介護の資格には王道のルートがあります。無資格→初任者研修→実務者研修→介護福祉士(国家資格)→ケアマネという流れです。喀痰吸引等研修は、この本線とは別に、現場のニーズに応じて「横から足す」スキルと考えるとわかりやすいです。実務者研修や介護福祉士については、実務者研修とは?初任者研修との違い・費用・取り方介護資格の種類の記事もあわせて読んでみてください。

モデルケース: 特養で働く介護福祉士のBさんは、実務者研修で医療的ケアの基礎は学んでいました。でも実地研修は受けていなかったため、たん吸引が必要な入居者のケアは看護師に頼っていました。施設の費用補助で第1号研修の実地研修まで修了し、都道府県に登録。今は看護師の指示のもとで吸引を担当できるようになり、「夜間に看護師を待たずに対応できて、利用者さんも自分も安心できるようになった」と話しています。たん吸引ができる職員は現場で重宝され、資格手当の対象になる事業所もあります。

よくある質問

まとめ:一歩ずつ確認すれば、着実に取れる資格

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • 喀痰吸引等研修は、介護職がたんの吸引・経管栄養(5つの行為)を行えるようになる研修
  • 号数(第1〜3号)は「対象者」と「できる行為の範囲」で分かれる。働く現場に合わせて選ぶ
  • 流れは基本研修(講義+演習)→実地研修→修了→都道府県に登録。勤務先の登録も必要
  • 実務者研修では基礎は学ぶが実地研修は別。費用は職場が補助してくれることも多い

たんの吸引や経管栄養は、命に関わる大切なケアです。だからこそ、研修は段階を追ってていねいに進むようになっています。むずかしそうに見えても、一つずつ確認していけば、着実に取れる資格です。

まずは、お住まいの地域でどんな研修機関があるのか、資料を取り寄せて見くらべるところから始めてみてください。あなたが対応できる範囲が広がることは、目の前の利用者さんの安心にもつながります。

喀痰吸引等研修は、無資格・未経験でも受けられますか?

第3号研修は、特定の方を支えるために無資格の方でも受けられる場合があります。一方、第1号・第2号研修は、実地研修に協力してくれる現場が必要なため、介護の仕事に就いている(または就く予定の)人が中心です。受講条件は研修機関によって異なるので、申し込み前に確認しましょう。

研修を修了すれば、すぐにたん吸引をしてもいいですか?

いいえ。修了証明書をもらったあと、都道府県への登録(認定証の交付)と、勤務先が登録事業者であることの両方が必要です。さらに、実際に行うときは必ず医師の指示と看護師との連携が前提になります。手順や判断を自己流にすることはできません。

第1号・第2号・第3号は、どれが上位ですか?

上下の関係ではなく、「対象と範囲のちがい」です。第1号は不特定の利用者に5行為すべて、第2号は不特定の利用者に一部、第3号は特定の利用者にその人の分だけ、という区分です。自分の働く現場に合うものを選びます。

実務者研修を持っていれば、喀痰吸引等研修は免除されますか?

実務者研修では医療的ケアの基礎(講義・演習の一部)を学ぶため、重なる部分はあります。ただし実地研修は含まれないので、現場で行うには別に実地研修を修了する必要があります。免除の範囲は制度や機関で異なるため、研修機関に確認してください。

費用は自分で払わないといけませんか?

自己負担のケースもありますが、勤務先が費用を負担・補助してくれることが多いです。施設側もたん吸引ができる職員を増やしたいためです。まずは職場に「研修費の補助はありますか」と相談してみましょう。

出典
  • 厚生労働省「喀痰吸引等制度について」
  • 社会福祉士及び介護福祉士法(喀痰吸引等の制度の根拠法)
  • 厚生労働省「実務者研修(医療的ケア)」
  • 各都道府県「喀痰吸引等研修 実施機関一覧」
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