# 介護の申し送りのコツと書き方|伝わる例文つき
「申し送りで何を言えばいいのか、いつも頭が真っ白になる」「話が長くなって、次の人を待たせてしまう」——介護の現場に立って間もないころ、そんなふうに感じる方はとても多いです。
申し送りは、毎日必ずやってくるのに、学校でしっかり習う機会が少ない仕事です。だからこそ「自己流でなんとなく」になりがちで、うまく伝わらずにヒヤッとした経験を持つ人も少なくありません。
この記事では、介護の申し送りを「目的」「伝えるべき要点」「口頭と記録のつなげ方」「場面別の例文」「時間を短くするコツ」「やってはいけないNG例」の順に、はじめての方でもそのまま使える形で解説します。読み終わるころには、「今日から何をどう伝えればいいか」がはっきりするはずです。

申し送り、うまくまとめられない…。時間もかかる。

伝わる申し送りには型があります。例文と時短のコツで、ぐっと楽になりますよ。
結論:申し送りは「次の人が困らない情報」を短く正確に
最初に結論からお伝えします。
申し送り(次の勤務者へ利用者さんの状態や出来事を引き継ぐこと)でいちばん大切なのは、うまく話すことではありません。「次に入る人が困らないための情報」を、もれなく・正確に・短く渡すことです。
まず、この3つだけ覚えてください。
- 目的は「利用者さんの安全と生活を切れ目なくつなぐ」こと。 自分の頑張りを報告する場ではありません
- 伝える中身は「事実」が中心。 「たぶん」「〜な気がする」といった自分の推測とは、はっきり分けて伝えます
- 口で言ったことは、必ず記録にも残す。 口頭だけの引き継ぎは、時間がたつと必ず消えてしまいます
この3つを意識するだけで、申し送りは「何を話そう」と悩む時間から、「必要なことを渡すだけ」のシンプルな作業に変わります。それでは、順番にくわしく見ていきましょう。
そもそも申し送りは何のためにするのか
24時間のケアを「バトン」でつなぐため
介護施設のケアは、24時間365日、途切れることなく続いています。日勤の人が帰っても、夜勤の人がその続きを担当します。この交代のときに情報を渡すのが申し送りです。
たとえるなら、リレーのバトンパスです。バトン(=利用者さんの情報)をうまく渡せないと、次の走者はスタートで戸惑ってしまいます。
- 昼に熱が少し高かったAさんのことをB看護師に伝え忘れる → 夜に急変しても「いつからか」がわからない
- 転びそうになったCさんの情報を渡し忘れる → 次の勤務者が同じ場面で目を離してしまう
このように、申し送りの目的は「あなたの勤務時間に起きたことを、次の時間帯に切れ目なくつなぐ」ことにあります。
「事故を防ぐ」ための安全のしくみでもある
申し送りは、単なる連絡ではありません。事故やトラブルを未然に防ぐための、大切な安全のしくみです。
たとえば「今日、Dさんは足元がふらついていた」という一言があれば、次の勤務者は移動のときに注意を向けられます。この一言があるかないかで、転倒事故が起きるかどうかが変わることもあります。
「小さなことだから、わざわざ言わなくてもいいかな」と思う情報ほど、実は次の人にとって大事だったりします。迷ったら「伝える」を選ぶのが基本です。
「みんなで同じケアをする」ためのそろえる作業
利用者さんにとっては、担当する職員が変わっても、受けるケアの質は同じであってほしいものです。申し送りは、チーム全員のケアの中身をそろえる役割も持っています。
「Eさんは、お茶にとろみを少なめでつけると飲みやすい」——こうした細かな工夫が共有されていれば、どの職員が対応しても、Eさんは同じように快適に過ごせます。
申し送りで伝えるべき要点
では、具体的に何を伝えればいいのでしょうか。優先順位の高い順に整理します。全部を毎回話すわけではなく、「変化があったもの」を中心に選びます。
優先して伝える5つの柱
| 分類 | 具体的に伝える内容 | なぜ大事か |
|---|---|---|
| ①体調の変化 | 発熱・血圧・食欲・顔色・むくみ・痛みの訴えなど | 急変やトラブルの早期発見につながる |
| ②食事・水分 | 食べた量・むせの有無・水分摂取量 | 脱水や誤嚥(食べ物が気管に入ること)の予防 |
| ③排泄 | 排便の有無・下痢や便秘・尿の量や色 | 体調のサインが最も出やすい部分 |
| ④事故・ヒヤリ | 転倒・転びそうになった・皮膚のはがれ・打撲など | 再発防止と経過観察のため |
| ⑤予定・依頼 | 受診・家族の来訪・処置の予定・次にやってほしいこと | 引き継ぎ漏れが直接の事故につながる |
この5つのうち「いつもと違うこと」があれば、必ず申し送りに入れます。逆に、いつも通りで変化のないことは、あえて細かく言う必要はありません。
「事実」と「自分の考え」を分けて伝える
申し送りでいちばん気をつけたいのが、事実と、自分の推測を混ぜないことです。
- 事実:「10時に体温を測ったら37.8度でした」
- 推測:「風邪かもしれません」
この2つは、はっきり分けて伝えます。「37.8度でした。風邪気味かな、と私は感じました」のように、事実を先に、自分の考えは「私は〜と思う」と主語をつけて言うと混ざりません。
なお、「風邪です」「感染症でしょう」といった病名の判断は、介護職の役割ではありません。体温などの数値と様子を正確に伝え、判断は看護師や医師にゆだねます。バイタル(体温・脈拍・血圧などの生命に関わる数値)の見方は、別記事の介護のバイタル測定の基礎でくわしく解説しています。
5W1Hで抜けをなくす
何を言えばいいか迷ったら、「5W1H」に当てはめると抜けがなくなります。むずかしく考えず、次の6つを埋めるだけです。
- いつ(When):「昼食後の13時ごろ」
- どこで(Where):「食堂で」
- 誰が(Who):「Fさんが」
- 何を(What):「むせこみました」
- なぜ(Why・わかれば):「急いで食べたためか」
- どうした(How):「背中をさすったら落ち着き、その後は普通に食べました」
このように並べると、「Fさんが昼食後にむせた」という短い情報でも、次の人が状況をしっかりイメージできます。
口頭と記録は必ずセットにする
申し送りには、口で伝える「口頭申し送り」と、紙やパソコンに書く「記録」の2つがあります。この2つは、どちらか片方ではなく、必ずセットで使います。
なぜ口頭だけではダメなのか
口頭だけの申し送りには、大きな弱点があります。
1. 時間がたつと忘れられる。 人の記憶は、数時間で驚くほどあいまいになります
2. その場にいない人に届かない。 遅番や翌日の人には伝わりません
3. 「言った・言わない」のトラブルになる。 記録がないと、あとで確認できません
だからこそ、口で伝えた大事なことは、必ず記録にも残します。「口頭で注意を促し、記録で証拠と経過を残す」——この2本立てが基本です。
口頭と記録の役割分担
| 手段 | 得意なこと | 使いどころ |
|---|---|---|
| 口頭申し送り | その場で強調・確認できる。質問し合える | 特に注意してほしいこと・緊急性の高いこと |
| 記録(介護記録) | 消えずに残る。全員が後から読める | すべての事実・経過・数値の保存 |
たとえば「Gさん、夜間に足がふらついていたので、トイレ誘導のとき特に見守ってください」は口頭で強調しつつ、記録には「23時、居室からトイレへ移動時にふらつきあり。付き添い介助にて転倒なし」と事実を書き残します。
記録の具体的な書き方は、介護記録の書き方の記事で、悪い例・良い例つきでくわしく紹介しています。あわせて読むと、口頭と記録のつなげ方がよりはっきりします。
申し送りノート・記録システムを上手に使う
多くの施設では、申し送りノートや、パソコン・タブレットの記録システムを使っています。これらを使うときのコツは、「口頭で言うこと」と「書いてあること」を重ねすぎないことです。
書いてあることを全部読み上げると、時間がかかるうえに集中力も続きません。記録に書いた内容のうち、「特に見てほしい部分」だけを口頭でピックアップして伝えると、短くて濃い申し送りになります。
場面別・伝わる申し送りの例文
ここからは、実際の場面ごとに「そのまま使える例文」を紹介します。長く話す必要はありません。太字の部分が、いちばん伝えたい要点です。
① 夜勤者へ引き継ぐとき(日勤 → 夜勤)
> 「Hさん、日中は落ち着いていましたが、夕方から少し咳が増えています。体温は17時に36.9度で平熱でした。水分をこまめに、夜間も声かけをお願いします。念のため看護師にも報告済みです。」
夜勤は人手が少なく、確認できる相手も限られます。だから「何を見ておけばいいか」を具体的に渡すことがカギです。夜勤そのものの働き方は夜勤とはでも解説しています。
② 日勤者へ引き継ぐとき(夜勤 → 日勤)
> 「昨夜、Iさんが2時にトイレで軽く尻もちをつきました。ケガはなく、本人も痛みの訴えはありません。日中も歩行時のふらつきに注意してください。ヒヤリハット記録は入力済みです。」
転倒やヒヤリハット(事故になりかけた出来事)は、必ず「起きたこと・ケガの有無・今後の注意」の3点をセットで渡します。ヒヤリハットの書き方はヒヤリハットの書き方を参考にしてください。
③ 体調に変化があったとき
> 「Jさん、昼食を半分残しました。いつもは完食される方です。むせはありませんでしたが、少し元気がない様子でした。体温・血圧は正常。夕食の食べ具合を見て、続くようなら看護師へ相談をお願いします。」
「いつもと違う」を伝えるときは、その人の「いつも」も一緒に添えると、変化の大きさが正しく伝わります。
④ デイサービスで家族に返すとき(送り時)
> 「今日は入浴に入られ、お背中に小さな赤みがありました。痛がる様子はありませんでしたが、ご家庭でも様子を見ていただけますか。レクリエーションでは笑顔が多く、昼食も完食されています。」
家族への申し送りは、専門用語を避けて、良かったことも必ず一緒に伝えるのがコツです。心配ごとだけを伝えると、家族を不安にさせてしまいます。
⑤ 次の人への「依頼」があるとき
> 「Kさん、14時に往診の予定があります。保険証をナースステーションに準備しておいたので、時間になったら居室へご案内をお願いします。」
依頼は「いつ・誰が・何を」を最初にはっきり言うと、聞き逃しが減ります。
例文づくりのテンプレート
迷ったら、次の型に当てはめるだけで文章になります。
「誰が」+「いつ・どんな変化があった」+「今どうか」+「次にお願いしたいこと」
この4ブロックを埋めれば、短くても必要なことがそろった申し送りになります。
申し送りの時間を短くするコツ
「申し送りが長くて、勤務時間を超えてしまう」という悩みは、現場でとても多いものです。時間を短くするための工夫を紹介します。
コツ1:「変化のあった人」だけに絞る
全員分を1人ずつ順番に話すと、どうしても長くなります。いつも通りの人は飛ばし、変化があった人だけを取り上げるのが基本です。
「今日は特に変わりありません」の一言で済む人には、時間をかけません。そのぶん、注意が必要な人にしっかり時間を使えます。
コツ2:結論を先に、理由をあとに言う
長くなる人の多くは、経緯から順番に話し始めます。そうではなく、「Lさん、発熱注意です」と結論を先に言い、そのあとで「実は昼から〜」と理由を続けます。
聞く側は、最初に「何の話か」がわかると、頭の中を整理しながら聞けます。
コツ3:記録を先に書いてから口頭にのぞむ
申し送りの直前に記録を書き終えておくと、「何を伝えるか」がすでに整理されています。記録を見ながら、要点だけを口頭で拾えば、話がまとまります。
- 記録を書く(事実を整理する)
- そのうちの「特に伝えたい部分」に印をつける
- 印の部分だけを口頭で話す
この流れにすると、二度手間がなくなり、全体の時間が縮まります。
コツ4:施設の「型」を決めておく
チーム全体で「体調→食事→排泄→事故→予定」の順に話す、と順番を決めておくと、話す側も聞く側もリズムがつかめます。順番が決まっていると「次は何だっけ」と考える時間がなくなります。
現場のリアル:申し送り漏れが招くヒヤリ
申し送りが「なぜこんなに大事なのか」は、うまくいかなかった場面を知るといちばん実感できます。ここでは、よくある失敗をモデルケースで紹介します。
モデルケース:特別養護老人ホーム(長く住む介護施設)で働く新人のMさん。日勤の終わりに、利用者Nさんが「午後から少し食欲がなかったこと」を、忙しさのなかで申し送り忘れてしまいました。
夜勤者はその情報を知らないまま夜を迎えます。深夜にNさんが体調をくずしても、「いつから食欲が落ちていたのか」がわからず、看護師への報告も遅れてしまいました。幸い大事には至りませんでしたが、Mさんは「あの一言を伝えていれば」と強く感じたそうです。
介護労働安定センターの調査でも、記録や引き継ぎといった事務的な負担は、現場の職員が感じる大きな課題として毎年挙げられています。(出典:介護労働安定センター「介護労働実態調査」)
大切なのは、Mさんを責めることではありません。「忙しいと抜けるのが人間」という前提で、記録に残す・型を決めるといったしくみで防ぐことです。申し送りは、個人の記憶力ではなく、チームのしくみで支えるものだと考えてください。
やってはいけない申し送りのNG例
最後に、つい やりがちな「伝わらない申し送り」のパターンを、直し方とセットで紹介します。
NG1:あいまいな言葉で終わる
- NG:「Oさん、なんとなく元気なかったです」
- OK:「Oさん、朝食を3割しか食べず、声かけへの返事も少なめでした」
「なんとなく」「ちょっと」「いつもより」だけでは、次の人に様子が伝わりません。数字や具体的な事実に置きかえます。
NG2:自分の感想や言い訳が長い
- NG:「私も忙しくて手が回らなくて、たぶん大丈夫だと思うんですけど…」
- OK:「Pさんの入浴は、時間が足りず未実施です。次の勤務でお願いします」
申し送りは反省会ではありません。できなかったことは、正直に、事実として渡すのがプロの対応です。言い訳は時間を奪うだけでなく、大事な情報をぼやけさせます。
NG3:情報を全部詰め込みすぎる
すべてを細かく話すと、聞く側は「どれが大事か」を見失います。優先順位の高いものから、大事なものに絞ることが、かえって正確さにつながります。
NG4:病名や診断を決めつける
- NG:「Qさん、たぶんインフルエンザです」
- OK:「Qさん、38.5度の発熱と関節痛の訴えあり。看護師に報告済みです」
くり返しになりますが、病気の判断は介護職の役割ではありません。事実を正確に伝え、判断は医療職につなぎます。これは利用者さんを守るための、大切な線引きです。
NG5:口頭で言っただけで記録しない
「口で言ったから大丈夫」は、いちばん危ない思い込みです。口頭で伝えた大事なことは、その日のうちに必ず記録へ。記録の残し方は介護記録の書き方を参考にしてください。
よくある質問
まとめ:申し送りは「次の人への思いやり」
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 申し送りの目的は、24時間のケアを切れ目なくつなぎ、事故を防ぐこと
- 伝えるのは「変化のあった事実」が中心。推測や病名の決めつけは避ける
- 口頭と記録は必ずセット。口で言ったことは、その日のうちに記録へ
- 迷ったら「誰が・どんな変化・今どうか・次にお願いしたいこと」の4つを埋める
- 短くするコツは、変化のあった人に絞り、結論を先に言うこと
申し送りは、うまく話す技術というより、「次に入る人が困らないように」という思いやりの作業です。その気持ちがあれば、言葉はあとからついてきます。
まずは今日の勤務から、変化のあった一人について「4つの型」で伝えることから始めてみてください。小さな積み重ねが、あなたの現場での信頼につながっていきます。
- 新人で、申し送りで何を言えばいいか毎回わかりません。どうすれば?
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まずは「変化があった人だけ」に絞り、「誰が・どんな変化・今どうか・次にお願いしたいこと」の4つを埋める練習から始めてください。最初はメモに書いてから話してOKです。慣れるまでは、先輩の申し送りを聞いて「型」をまねるのがいちばんの近道です。
- 申し送りが長いと注意されます。短くするには?
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結論を先に言うクセをつけてください。「Rさん、発熱注意です。理由は〜」の順です。また、記録に書いてあることを全部読み上げず、「特に見てほしい部分」だけを口頭で拾うと、ぐっと短くなります。
- 口頭と記録、どちらを優先すべきですか?
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どちらか一方ではなく、両方セットが正解です。緊急で強調したいことは口頭で、消えずに残す事実の保存は記録で、と役割を分けます。「口頭で促し、記録で残す」と覚えてください。
- 夜勤の申し送りで特に気をつけることは?
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夜勤は人手が少ないので、「夜間に何を見ておくべきか」を具体的に渡すことが大切です。発熱・ふらつき・眠りの浅い方などは、名前と注意点をはっきり伝えます。夜勤帯の記録の書き方は夜勤記録の例文も参考になります。
- 申し送りで聞き逃してしまったときは?
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その場で必ず聞き返してください。「すみません、Sさんのお薬の件、もう一度お願いします」と確認するのは、まったく恥ずかしいことではありません。あいまいなまま勤務に入るほうが、よほど危険です。わからないことを確認できる人が、信頼される人です。
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