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利用者からの暴言・暴力・セクハラへの対処法|一人で抱えない

# 利用者からの暴言・暴力・セクハラへの対処法|一人で抱えない

「大声で怒鳴られて、手が震えて止まらなかった」「体をさわられたのに、笑ってごまかすしかなかった」——そんな経験をして、このページにたどり着いた方も多いと思います。

その出来事は、あなたが弱いから起きたわけではありません。介護の現場では、利用者さんやそのご家族から、暴言・暴力・セクハラを受ける人が少なくないのが現実です。

この記事では、そうした行為への対処法を、できるだけやさしい言葉で解説します。記録の残し方、職場への報告、一人で抱えないコツ、身の危険があるときの動き方まで、順番にお伝えします。読み終わるころには、「明日から、まず何をすればいいか」がはっきりするはずです。

悩む介護士

利用者さんからの暴言や身体への行為がつらい…。仕事だから仕方ないのかな。

ケアワーカーハブ編集部

仕方なくありません。一人で抱えない対処と、身を守る方法をいっしょに整理しましょう。

目次

結論:利用者さんからの暴力・セクハラは、我慢しなくていい

最初に、いちばん大事なことをお伝えします。

利用者さんやご家族からの暴力・セクハラは、あなたが我慢すべきものではありません。 「介護の仕事だから仕方ない」ではないのです。

こうした行為は、まとめて「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と呼ばれます。カスハラとは、お客さん(介護では利用者さんやそのご家族)からの、度を超えた暴言・暴力・無理な要求のことです。

大事なのは、次の3つの考え方です。

  • 一人で抱え込まない。 記録して、職場に報告し、みんなで対応するのが基本です
  • 「サービス業だから」で線を越えさせない。 ていねいなケアと、我慢は別のものです
  • 身の危険があるときは、ケアより自分の安全が優先。 逃げる・応援を呼ぶ・必要なら警察、これは正しい行動です

一方で、認知症(記憶や判断の力が少しずつ弱くなる病気)が背景にある言動は、少し見方を変えると対応の糸口が見えることもあります。この点は後の章でくわしく説明します。それでも、暴力やセクハラそのものを我慢する理由にはならない、という順番で読んでください。

そもそもカスハラとは?介護現場で起きていること

カスハラと聞くと少しかたい言葉ですが、中身は身近なものです。介護の現場では、たとえば次のような形で起きます。

よくある3つのタイプ

タイプ具体例
暴言・暴力大声で怒鳴る、たたく、つねる、物を投げる、つばを吐く
セクハラ体をさわる、下ネタを言う、性的なことをしつこく要求する
過度な要求・クレーム理不尽な要求を繰り返す、土下座を求める、担当を執拗に責める

これらは利用者さん本人からだけでなく、そのご家族から向けられることもあります。 「もっとていねいに看てほしい」という思いが、行きすぎたクレームや暴言に変わってしまうケースです。

「たいしたことない」と思わなくていい

たとえば、「冗談だよ」と笑いながら体をさわられる。たとえば、送迎のたびに下ネタを言われる。こうした一つひとつは、周りから見ると小さく映るかもしれません。

でも、毎日くり返されれば、心はすり減っていきます。「これくらいで騒いだら大げさかな」と自分にフタをする必要はありません。あなたが不快に感じた時点で、それは対応すべき出来事です。

近年は、こうした介護現場のカスハラへの対策の必要性が、社会全体で広く指摘されるようになりました。国(厚生労働省)も、事業所向けにカスハラ対策の周知を進めています。つまり「個人がなんとかする問題」から「職場ぐるみで防ぐ問題」へと、考え方が変わってきているのです。

なぜ、介護職は我慢してしまうのか

「おかしい」と感じても、その場でうまく言い返せない。あとから「言えばよかった」と落ち込む。これは、あなたの性格の問題ではありません。介護職が我慢しやすい理由が、ちゃんとあります。

  • 相手が弱い立場の人だから。 「病気や高齢のせいかもしれない」と思うと、強く出られない
  • サービス業の意識が強いから。 「利用者さんは大切にするもの」という気持ちが、線引きをむずかしくする
  • 人手が足りないから。 一人で担当する場面が多く、その場で助けを呼びにくい
  • 「自分の対応が悪かったのかも」と思ってしまうから。 まじめな人ほど、原因を自分に向けがち

でも、思い出してください。あなたが優しいことと、暴力やセクハラを受け入れることは、まったく別の話です。優しさは、自分を傷つけてまで差し出すものではありません。

介護の仕事のつらさそのものについては、介護職がきついと感じる理由と対処法でもくわしくまとめています。あわせて読んでみてください。

認知症などが背景の言動は「本人が困っているサイン」

ここで、少し大切な視点をお伝えします。特に認知症のある利用者さんの暴言や抵抗には、背景があることが多いのです。

「困っているサイン」として見てみる

認知症になると、記憶や判断の力が少しずつ弱くなります。すると、本人の中ではこんなことが起きています。

  • 「ここがどこか分からない」「この人は誰だろう」という不安
  • 体の痛みや不快感を、うまく言葉で伝えられないもどかしさ
  • 急に体をさわられて(介助されて)、びっくりして身を守ろうとする気持ち

たとえば、着替えの介助で急に手をつかまれて怒鳴られたとき。本人からすると「知らない人にいきなり服を脱がされそうになった」と感じているのかもしれません。

つまり、暴言や抵抗は「攻撃」ではなく「本人が困っているサイン」として見ると、対応のヒントが見つかることがあります。声かけをゆっくりにする、正面から目を合わせる、何をするか一つずつ伝える。こうした工夫で落ち着く場面は少なくありません。

くわしい関わり方のコツは、認知症の方への対応の基本にまとめています。「なぜその行動が起きるのか」を知るだけで、気持ちがぐっと楽になることもあります。

それでも、暴力・セクハラを我慢する理由にはならない

ここで、はっきりさせておきたいことがあります。

「背景を理解する」ことと、「暴力やセクハラを受け入れる」ことは、まったくの別物です。

  • 背景を理解するのは、より良いケアと、あなた自身を守るためのヒントにするため
  • でも、たたかれ続けたり、体をさわられ続けたりしていいわけではありません

「病気だから仕方ない」で終わらせず、チームで関わり方を見直し、あなたが傷つかない体制をつくる。 これが正しい向き合い方です。理解と我慢は、切り分けて考えてください。

つらいときの対処法:5つのステップ

では、実際に暴言・暴力・セクハラを受けたとき、何をすればいいのでしょうか。基本の流れを5つのステップにまとめました。

ステップ1. まず記録する

いちばん大切で、いちばん忘れられがちなのが「記録」です。記録とは、起きたことを紙やデータに残しておくことです。

次の項目を、できるだけその日のうちにメモしてください。記憶は、時間がたつほど薄れます。

記録する項目書き方の例
いつ〇月〇日 14時ごろ
どこで〇〇さんの居室で
誰が利用者〇〇さん本人/〇〇さんの長男
何をされたか「〇〇」と大声で言われ、右腕をつかまれた
自分の状態腕に赤いあざ/恐怖で手が震えた

事実を、そのまま書くのがコツです。「たぶん」「〜だと思う」といった推測ではなく、「言われた言葉」「されたこと」を具体的に残します。この記録が、あとで職場に相談するときの土台になります。

ステップ2. 職場に報告する

記録ができたら、上司やリーダーに報告します。「こんなことで報告していいのかな」とためらう必要はありません。

報告は、あなたが大げさな人だからするのではありません。同じことが、次は別の同僚に起きるのを防ぐためでもあります。

口で伝えるだけだと流されてしまうこともあるので、ステップ1の記録を見せながら伝えるのが確実です。もし上司が取り合ってくれないときの対処は、後の章でお伝えします。

ステップ3. 一人で対応しない(複数対応)

暴言やセクハラが起きやすい利用者さんには、できるだけ一人で対応しない体制をつくります。これを「複数対応」と呼びます。

  • 介助を二人で行う(着替えや入浴など、密室になりやすい場面はとくに)
  • 男性利用者のセクハラには、可能なら対応者の性別を配慮する
  • 「一人にならない」だけで、相手も行為をしにくくなる

これは、あなた一人で決められることではありません。だからこそ、ステップ2の報告を通じて、チームで決めていく必要があります。

ステップ4. 組織として対応する

カスハラは、個人の力でどうにかする問題ではありません。職場(組織)として対応するのが基本です。

たとえば、次のような対応が考えられます。

  • ケアの記録に「対応時の注意点」として共有し、全員が同じ対応をとる
  • ご家族からの過度なクレームには、担当一人でなく管理者が窓口になる
  • あまりに危険な場合は、契約やサービス内容の見直しを事業所として検討する

「自分が我慢すれば丸くおさまる」と抱え込むほど、問題は見えなくなります。声を上げることが、職場全体を守ることにつながります。

ステップ5. ケア(関わり方)を見直す

最後に、そもそもの関わり方に、改善の余地がないかをチームで見直します。これは「あなたが悪かった」という意味ではありません。

  • 声かけのタイミングや言葉づかいを変えたら落ち着くか
  • 不快感や痛みなど、行動の裏にある原因はないか
  • 対応する時間帯や環境を変えられないか

とくに認知症のある方の場合、認知症の方への対応の基本を参考に関わり方を工夫すると、暴言や抵抗そのものが減ることもあります。「記録・報告・体制づくり」と「ケアの見直し」は、両輪で進めるのが理想です。

一人で抱えないための工夫

ここまで読んで、「そうは言っても、言い出しにくい」と感じた方もいるかもしれません。一人で抱えないための、小さな工夫を紹介します。

  • 信頼できる同僚に、まず話す。 「実はこんなことがあって」と口に出すだけで、心の重さは変わります
  • 職場の相談窓口を確認しておく。 ハラスメントの相談先を用意している事業所は増えています
  • 記録を「自分用」にも残す。 職場に出すものとは別に、自分の手元にも控えておくと安心です
  • 社外の窓口も知っておく。 一人で決められないときは、公的な相談先(後述)もあります

職場の人間関係そのものに悩んでいる場合は、介護職の人間関係の悩みと対処法もヒントになります。誰に、どう話すかを整理するだけで、気持ちは軽くなります。

こうしたモヤモヤを溜め込まない習慣づくりは、介護職のストレス解消法でもくわしくまとめています。心がすり減る前に、こまめに手を打ってください。

身の危険を感じたら:安全確保・応援・警察

ここは、いちばん大切な章です。暴力がエスカレートして、身の危険を感じたとき。そのときは、これまでの手順よりもあなたの安全が最優先です。

1. まず、その場から離れて安全を確保する

殴られそう、物を投げられそう——そう感じたら、まずその場を離れてください。「ケアを中断してはいけない」という思い込みは、いったん手放して大丈夫です。

あなたがケガをしたら、そのあとのケアもできなくなります。 自分を守ることは、逃げることではありません。

2. 大きな声で応援を呼ぶ

一人で対応しようとせず、大きな声で他のスタッフを呼びます。「〇〇さん、来てください!」と、具体的な名前を呼ぶと人は動きやすくなります。

複数人になるだけで、状況が落ち着くことは多いです。ためらわず、助けを求めてください。

3. 必要に応じて警察を呼ぶ

暴力が止まらない、ケガをした、身の危険が去らない。そんなときは、必要に応じて警察(110番)を呼ぶことも、正しい選択です。

「利用者さんを警察に通報するなんて」とためらう気持ちは分かります。でも、暴力は暴力です。あなたと、周りの利用者さんの安全を守るための行動を、遠慮する必要はありません。

なお、ケガをした場合や体調の異変があるときの手当ては、自己判断せず医師や看護師に必ず相談してください。この記事は、医療的な処置や診断をお伝えするものではありません。痛みやケガは、専門家に診てもらうのがいちばんです。

つらさが続くなら、環境を変えるのも立派な選択

記録して、報告して、チームで対応する。それでも状況が変わらない職場も、残念ながらあります。

  • 報告しても「あなたの対応が悪い」と言われてしまう
  • 相談窓口がなく、誰も助けてくれない
  • 心と体が、限界に近づいている

そんなときは、あなたが職場を変えるという選択があってもいいのです。それは逃げでも、負けでもありません。安全に働ける場所を選ぶのは、あなたの当然の権利です。

たとえば、転職の相談に乗ってくれる「介護転職エージェント」を使う方法があります。エージェントとは、あなたの希望を聞いて、条件に合う職場を無料で紹介してくれるサービスです。「ハラスメント対策がしっかりした施設を探したい」と伝えれば、職場の雰囲気まで踏まえて紹介してもらえます。

「辞めたい」という気持ちが強くなってきた方は、介護を辞めたいと思ったときの考え方も読んでみてください。今の職場を続けるにしても、離れるにしても、選択肢を知っておくだけで心に余裕が生まれます。

まずは無料で相談してみて、合わなければ使わなくても大丈夫。「今の職場だけがすべてじゃない」と思えることが、明日を少し楽にしてくれます。

よくある質問

まとめ:あなたの安全は、ケアと同じくらい大切

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • 利用者さん・ご家族からの暴力・セクハラは、我慢しなくていい
  • 対処の基本は、記録 → 報告 → 複数対応 → 組織対応 → ケアの見直し
  • 認知症などが背景の言動は「本人が困っているサイン」。でも理解と我慢は別物
  • 身の危険があるときは、安全確保 → 応援 → 必要なら警察が最優先
  • 状況が変わらないなら、職場を変えるのも立派な選択

あなたが毎日ていねいに向き合っていることは、決して当たり前ではありません。その優しさを守るためにも、つらいことは一人で抱えないでください。

まずは、今日あったことを一行メモに残すことから。そして、信頼できる誰かに「実はね」と話してみることから。小さな一歩が、あなたを守る大きな力になります。

「利用者さんは大切にするもの」と教わりました。暴言も我慢すべきですか?

いいえ、我慢すべきではありません。利用者さんを大切にすることと、あなたが暴言や暴力を受け入れることは、まったく別のことです。ていねいなケアはしつつ、度を超えた行為は記録して職場に報告してください。優しさは、自分を傷つけてまで差し出すものではありません。

認知症の方の暴言や抵抗も、報告していいのでしょうか?

はい、報告してかまいません。認知症のある方の言動には「本人が困っているサイン」という背景があることが多く、関わり方の見直しで落ち着く場合もあります。ただし、背景を理解することと、あなたが我慢することは別です。チームで対応を共有するためにも、記録と報告は続けてください。関わり方のコツは認知症の方への対応の基本を参考にしてください。

セクハラをされましたが、証拠がありません。どうすればいいですか?

まず、起きたことをできるだけ早くメモに残してください。「いつ・どこで・誰に・何をされたか・そのとき自分がどう感じたか」を具体的に書くだけでも、立派な記録になります。録画や録音がなくても、日々の記録の積み重ねが、職場に相談するときの土台になります。一人で抱えず、信頼できる同僚や上司に話すことから始めましょう。

上司に報告しても、まともに取り合ってくれません。

社内で解決しないときは、社外の窓口に相談する方法があります。各都道府県の労働局や、総合労働相談コーナーでは、ハラスメントの相談を無料で受け付けています。職場のルール上、事業主にはハラスメント防止の対策をとる義務があります。「個人の問題」ではなく「職場が対応すべきこと」だと知っておいてください。

利用者さんを警察に通報したら、大ごとになりませんか?

身の危険があるときは、通報をためらわないでください。暴力は、相手が誰であっても暴力です。あなた自身と、周りの利用者さんの安全を守ることが最優先です。まずはその場から離れて安全を確保し、応援を呼び、それでも危険が続くなら警察(110番)を呼ぶ。これは正しい判断であり、あなたを責める人はいません。

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